》、棟《むね》の雲《くも》の切《き》れ間《ま》を仰《あふ》いで、勇《いさ》ましく天守《てんしゆ》に昇《のぼ》ると、四階目《しかいめ》を上切《のぼりき》つた、五階《ごかい》の口《くち》で、フト暗《くら》い中《なか》に、金色《こんじき》の光《ひかり》を放《はな》つ、爛々《らん/\》たる眼《まなこ》を見《み》た、
 一|目《め》見《み》て、
「やあ、祖父殿《おんぢいどん》が、」
と老爺《ぢい》が叫《さけ》ぶ、……其《それ》なるは、黄金《こがね》の鯱《しやち》の頭《かしら》に似《に》た、一個《いつこ》青面《せいめん》の獅子《しゝ》の頭《かしら》、活《い》けるが如《ごと》き木彫《きぼり》の名作《めいさく》。櫓《やぐら》を圧《あつ》して、のつしとあり。角《つの》も、牙《きば》も、双六谷《すごろくだに》の黒雲《くろくも》の中《なか》に見《み》た、其《それ》であつた。……
 祖父《おほぢ》の作《さく》に、久《ひさ》しぶりの話《はなし》がある、と美女《たをやめ》の像《ざう》を受取《うけと》つて、老爺《ぢい》は天守《てんしゆ》に胡座《あぐら》して後《あと》に残《のこ》つた。時《とき》に、祖父《おほぢ》が我
前へ 次へ
全284ページ中280ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
泉 鏡花 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング