《ごしやく》、仁王《にわう》の顔《かほ》を上《うへ》に二《ふた》つ下《した》に三《み》つ合《あ》はせたばかり、目《め》に余《あま》る大《おほき》さと成《な》つて、カチ/\と歯《は》の鳴《な》る時《とき》、鰐《わに》かと思《おも》ふ大口《おほぐち》を赫《くわつ》と開《ひら》いて、上頤《うはあご》を嘗《な》める舌《した》が赤《あか》い。
「騒《さわ》ぐまい、時々《とき/″\》ある……深山幽谷《しんざんいうこく》の変《へん》じや。少《わか》い人《ひと》、誰《たれ》の顔《かほ》も何《ど》の姿《すがた》も、何《ど》う変《かは》るか知《し》んねえだ! 驚《おどろ》くと気《き》が狂《くる》ふぞ、目《め》を塞《ふさ》いで踞《せぐゝま》れ、蹲《しやが》め、突伏《つゝふ》せ、目《め》を塞《ふさ》げい。」
と老爺《ぢい》が呼《よば》はる。
 雪枝《ゆきえ》はハツと身《み》を伏《ふ》せて、巌《いは》に吸込《すひこ》まれるかと呼吸《いき》を詰《つ》めたが、胸《むね》の動悸《だうき》が、持上《もちあ》げ揺上《ゆりあ》げ、山谷《さんこく》尽《こと/″\》く震《ふる》ふを覚《おぼ》えた。
 殷々《ゐん/\》として雷《
前へ 次へ
全284ページ中267ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
泉 鏡花 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング