》ひ去《さ》つて、つゝと消《き》えると、電《いなづま》が空《くう》を切《き》つた。……坊主《ばうず》の法衣《ころも》は、大巌《おほいは》の色《いろ》の乱《みだ》れた双六《すごろく》の盤《ばん》を蔽《おほ》ふて、四辺《あたり》は墨《すみ》よりも蔭《かげ》が黒《くろ》い。
ト暗夜《あんや》の如《ごと》き山懐《やまふところ》を、桜《さくら》の花《はな》は矢《や》を射《ゐ》るばかり、白《しろ》い雨《あめ》と散《ち》り灌《そゝ》ぐ。其《そ》の間《あひだ》をくわつと輝《かゞや》く、電光《いなびかり》の縫目《ぬいめ》から空《そら》を破《やぶ》つて突出《つきだ》した、坊主《ばうず》の面《つら》は物凄《ものすさま》しいものである……
唯《と》見《み》れば、頭《かしら》に、無手《むづ》と一本《いつぽん》の角《つの》生《お》ひたり。顔面《がんめん》黒《くろ》く漆《うるし》して、目《め》の隈《くま》、鼻頭《はなづら》、透通《すきとほ》る紫陽花《あぢさゐ》に藍《あゐ》を流《なが》し、額《ひたひ》から頤《あぎと》に掛《か》けて、長《なが》さ三尺《さんじやく》、口《くち》から口《くち》へ其《そ》の巾《はゞ》五尺
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