《さぐ》つた、烏帽子《えぼうし》を丁《チヨン》と冠《かぶ》つて、更《あらた》めてづゝと出《で》た。
 美女《たをやめ》は密《そ》と鬢《びん》を圧《おさ》へた。
 声《こゑ》も出《だ》せぬ雪枝《ゆきえ》に代《かは》つて、老爺《ぢい》が始終《しゞう》を物語《ものがた》つた……
 坊主《ばうず》は、時々《とき/″\》眼《まなこ》を開《ひら》いて、聞澄《きゝすま》す美女《たをやめ》の横顔《よこがほ》を窺《うかゞ》ひ見《み》る。
「お姫様《ひめさま》、」
と語《かた》り果《は》てゝ老爺《ぢい》が呼《よ》んで、
「お助《たす》けを遣《つか》はされ、さあ、少《わか》い人《ひと》、願《ねが》へ。」
「姫様《ひいさま》、」
と雪枝《ゆきえ》は、窶《やつ》れに窶《やつ》れた人間《にんげん》の顔《かほ》して見上《みあ》げた。
「上※[#「藹」の「言」に代えて「月」、第3水準1−91−26]《じやうらう》どの、」と坊主《ばうず》も言足《いひた》す。
 美女《たをやめ》は引合《ひきあ》はせた袖《そで》を開《ひら》いた。而《そ》して、
「天守《てんしゆ》のお使者《つかひ》、天守《てんしゆ》のお使者《つかひ》。」

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