《かぞ》へて、鼓草《たんぽゝ》の駒《こま》を取《と》つて、格子《かうし》の中《なか》へ、……菫《すみれ》の花《はな》の色《いろ》を分《わ》けて、静《しづか》に置替《おきか》へながら、莞爾《につこ》と微笑《ほゝゑ》む。……
 気高《けだか》い中《なか》に其《そ》の優《やさ》しさ。
「は、」と、思《おも》はず雪枝《ゆきえ》は、此方《こなた》に潜《ひそ》みながら押堪《おしこら》へた息《いき》が発奮《はづ》んだ。
「誰《たれ》? ……」
と美女《たをやめ》の声《こゑ》が懸《かゝ》る。
 老爺《ぢい》は咳《しはぶき》を一《ひと》つ故《わざ》として、雪枝《ゆきえ》の背中《せなか》を丁《とん》と突出《つきだ》す。これに押出《おしだ》されたやうに、蹌踉《よろめ》いて、鼓草《たんぽゝ》菫《すみれ》の花《はな》を行《ゆ》く、雲《くも》踏《ふ》む浮足《うきあし》、ふらふらと成《な》つたまゝで、双六《すごろく》の前《まへ》に渠《かれ》は両手《りやうて》を支《つ》いて跪《ひざまづ》いたのであつた。
 坊主《ばうず》は懐中《ふところ》の輪袈裟《わげさ》を取《と》つて懸《か》け、老爺《ぢい》は麻袋《あさふくろ》を探
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