》の崖《がけ》なりに、桜《さくら》の影《かげ》を霞《かすみ》の被衣《かつぎ》、ふうわり背中《せなか》から裳《すそ》へ落《おと》して、鼓草《たんぽゝ》と菫《すみれ》の敷満《しきみ》ちた巌《いは》を前《まへ》に、其《そ》の美女《たをやめ》が居《ゐ》たのである。
 少時《しばらく》、一行《いつかう》は呼吸《いき》を凝《こ》らした。
 見《み》よ! 見《み》よ! 巌《いは》の面《めん》は滑《なめら》かに、質《しつ》の青《あを》い艶《つや》を刻《きざ》んで、花《はな》の色《いろ》を映《うつ》したれば、恰《あたか》も紫《むらさき》の筋《すぢ》を彫《ほ》つた、自然《しぜん》に奇代《きたい》の双六磐《すごろくいは》。磐面《ばんめん》には花《はな》を摘《つ》んだ、大輪《だいりん》の菫《すみれ》と鼓草《たんぽゝ》とが、陽炎《かげらふ》の輝《かゞや》く中《なか》に、鼓草《たんぽゝ》は濃《こ》く、菫《すみれ》は薄《うす》く、美《うつく》しく色《いろ》を分《わか》つて、十二輪《じふにりん》、十二輪《じふにりん》、二十四輪《にじふしりん》の駒《こま》なるよ……向《むか》ふ合《あ》はせに区劃《くぎり》を隔《へだ》て
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