れ》も増《ま》さない。で、足《あし》を運《はこ》ぶ内《うち》に至《いた》り着《つ》いたので、宛然《さながら》、城址《しろあと》の場所《ばしよ》から、森《もり》を土塀《どべい》に、一重《ひとへ》隔《へだ》てた背中合《せなかあ》はせの隣家《となり》ぐらゐにしか感《かん》じない。――最《もつと》も案内《あんない》をすると云《い》ふ老爺《ぢい》より、坊主《ばうず》の方《はう》が、すた/\先《さき》へ立《た》つて歩行《ある》いたが。
時《とき》に、真先《まつさき》に、一朶《いちだ》の桜《さくら》が靉靆《あいたい》として、霞《かすみ》の中《なか》に朦朧《もうろう》たる光《ひかり》を放《はな》つて、山懐《やまふところ》に靡《なび》くのが、翌方《あけがた》の明星《みやうじやう》見《み》るやう、巌陰《いはかげ》を出《で》た目《め》に颯《さつ》と映《うつ》つた。
四五六谷《しごろくだに》
四十三
「叱《しつ》!」
と老爺《ぢい》が警蹕《けいひつ》めいた声《こゑ》を、我《われ》と我《わ》が口《くち》へ轡《くつわ》に懸《か》ける。
トなだらかな、薄紫《うすむらさき
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