《そで》を開《ひら》いて、翼《つばさ》の目潰《めつぶし》、黒《くろ》く煽《あふ》つて、
『と、な、……天守《てんしゆ》の主人《あるじ》が言《い》はるゝのぢや……それが何《なに》もない天井《てんじやう》から、此《こ》の指《ゆび》にぶる/\と響《ひゞ》いて聞《き》こえた。』
 衝《つ》と、天守《てんしゆ》の棟《むね》を切《き》つて、人指指《ひとさしゆび》を空《そら》に延《の》ばすと、雪枝《ゆきえ》は蒼《あを》く成《な》つて、ばつたり膝支《ひざつ》く。
 負《ま》けぬ気《き》の老爺《ぢい》は、前屈《まへこゞ》みに腰《こし》を入《い》れて、
『分《わか》つた、分《わか》つたよ、御坊《ごばう》。お前様《めえさま》が、仏《ほとけ》でも鬼《おに》でも、魔物《まもの》でも、唯《たゞ》の人間《にんげん》の坊様《ばうさま》でも可《え》え。言《い》はつしやる事《こと》は腑《ふ》に落《お》ちた……疾《はや》い話《はなし》が、此《こ》の人《ひと》な持《も》つて行《い》つたは、腹《はら》を出《だ》いた鮒《ふな》だで、美《うつく》しい奥様《おくさま》とは取替《とりか》へぬ。……鰭《ひれ》を立《た》てた魚《うを》を持
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