ね》を折《を》らせるな、娑婆《しやば》ツ気《け》な老爺《おやぢ》めが、』
と二人《ふたり》の背後《うしろ》にぬいと立《た》つた……
 苔《こけ》かと見《み》ゆる薄毛《うすげ》の天窓《あたま》に、笠《かさ》も被《かぶ》らず、大木《たいぼく》の朽《く》ちたのが月夜《つきよ》に影《かげ》の射《さ》すやうな、ぼけやた色《いろ》の黒染《すみぞめ》扮装《でたち》で、顔《かほ》の蒼《あを》い大入道《おほにうだう》!
 振向《ふりむ》いた老爺《おやぢ》の顔《かほ》を瞰下《みお》ろして、
『覚《おぼ》えて居《ゐ》るか、暗《やみ》の晩《ばん》を、』と北叟笑《ほくそゑ》みした頬《ほゝ》が暗《くら》い。


       人《ひと》さし指《ゆび》


         三十九

『おゝ、御坊《ごばう》?』
『何日《いつ》かの晩《ばん》の!』
 雪枝《ゆきえ》と老爺《ぢい》は左右《さいう》から斉《ひと》しく呼《よ》ばわる。
『御身《おみ》も其《そ》の時《とき》の少《わか》い人《ひと》な。』と雪枝《ゆきえ》に向《む》いて、片頬《かたほゝ》を又《また》暗《くら》うして薄笑《うすわら》ひを為《し》た。
『血気《けつき
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