ゆ》の矢間《やざま》を湧《わ》いて出《で》るやうな黒坊主《くろばうず》の姿《すがた》を見《み》たが、烏《からす》か、梟《ふくろう》か、と思《おも》つた。
 が、大牛《おほうし》が居《ゐ》る、妻《つま》の囚《とら》はれた魔《ま》の城《しろ》である……よし其《それ》が天狗《てんぐ》でも、気《き》を散《ち》らす処《ところ》でない。爰《こゝ》に一刀《いつたう》を下《お》ろすは、彼《かれ》を救《すく》ふ一歩《いつぽ》である、と爽《さはや》かに木削《きくづ》を散《ち》らして一思《ひとおも》ひに刻《きざみ》果《は》てた。
『どう、見《み》せさつせえ。』
 疾《と》く我《わ》が小刀《こがたな》を袋《ふくろ》に納《をさ》めて、頤杖《あごづゑ》して待《ま》つて居《ゐ》た老爺《ぢい》は、雪枝《ゆきえ》の作品《さくひん》を掌《て》に据《す》えて煙管《きせる》を啣《くは》えた。
『おゝ、出来《でき》た。ぴち/\と刎《は》ねる……いや、恁《か》うあらうと思《おも》ふた……見事《みごと》なものぢや、乾《かはか》して置《お》くと押死《おつち》ぬべい、それ、勝手《かつて》に泳《およ》げ!』とひよいと、放《はふ》ると、濠
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