届《とゞ》きさうに成《な》つても、何《ど》うしても尾《を》に及《およ》ばぬ……牛《うし》は急《いそ》ぐともなく、動《うご》かない朧夜《おぼろよ》が自然《おのづ》から時《とき》の移《うつ》るやうに悠々《いう/\》とのさばり行《ゆ》く。
しばらくして、此《こ》の大手筋《おほてすぢ》を、去年《きよねん》一昨年《おととし》のまゝらしい、枯蘆《かれあし》の中《なか》を縫《ぬ》つた時《とき》は、俗《ぞく》に水底《みづそこ》を踏《ふ》んで通《とほ》ると言《い》ふ、どつしりしたものに見《み》えた。背《せな》の彫像《てうざう》の仰向《あふむ》けの胸《むね》に采《さい》を握《にぎ》つた拳《こぶし》が、苦《くるし》んで空《くう》を掴《つか》むやうに見《み》えて堪《た》へられない。
後《あと》を喘《あへ》ぎ/\、はあ/\と呼吸《いき》して続《つゞ》く。
「其《そ》の牛《うし》が、老爺《おぢい》さん、」
と雪枝《ゆきえ》は聞《き》くものを呼懸《よびか》けた。
天守《てんしゆ》の礎《いしずゑ》の土《つち》を後脚《あとあし》で踏《ふ》んで、前脚《まへあし》を上《うへ》へ挙《あ》げて、高《たか》く棟《むね》を抱
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