方《こなた》へ尾《を》を向《む》けてのそりと行《ゆ》く。其《そ》の図体《づうたい》は山《やま》を圧《あつ》して此《こ》の野原《のはら》にも幅《はゞ》つたいほど、朧《おぼろ》の中《なか》に影《かげ》が偉《おほき》い。其《そ》の背中《せなか》にお浦《うら》の像《ざう》が、紅《くれなゐ》の扱帯《しごき》を長《なが》く、仰向《あふむ》けに成《な》つて柔《やはら》かに懸《かゝ》つて居《ゐ》る。」
三十五
「破《やぶ》れ傘《がさ》の車《くるま》では、別《べつ》に侮《あなど》られ辱《はづかし》められるとも思《おも》はなかつたが、今《いま》牛《うし》の背《せ》に懸《か》けられたのを見《み》ると、酷《むごた》らしくて我慢《がまん》が出来《でき》ない! 木《き》を刻《きざ》んだものではあるが、節《ふし》から両岐《ふたまた》に裂《さ》かれさうに思《おも》はれて、生身《なまみ》のお浦《うら》だか、像《ざう》の女《をんな》だか、分別《ふんべつ》も着《つ》かないくらゐ。
『あツ、』と叫《さけ》んで、背後《うしろ》から飛蒐《とびかゝ》つたが、最《も》う一足《ひとあし》の処《ところ》で手《て》が
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