ゆ》れつゝ来《こ》らるゝ。
「此《こ》の野原《のはら》に来《き》た時《とき》です。」
と雪枝《ゆきえ》は老爺《ぢい》に向《むか》いて、振返《ふりかへ》つて左右《さいう》を視《なが》めた。
 陽炎《かげらふ》が膝《ひざ》に這《は》つて、太陽《たいやう》はほか/\と射《さ》して居《ゐ》る。空《そら》は晴《は》れたが、草《くさ》の葉《は》の濡色《ぬれいろ》は、次第《しだい》に霞《かすみ》に吸取《すひと》られやうとする風情《ふぜい》である。
「其《そ》の地蔵尊《ぢざうそん》が、前《まへ》の方《はう》から錫杖《しやくぢやう》を支《つ》いたなりで、後《うしろ》に続《つゞ》いた私《わたし》と擦違《すれちが》つて、黙《だま》つて坂《さか》の方《はう》へ戻《もど》つて行《ゆ》かるゝ……と案山子《かゝし》もぞろ/\と引返《ひきかへ》すんです。
 番傘《ばんがさ》は、と見《み》ると、此《これ》もくる/\と廻《まは》つて返《かへ》る。が、まるで空《から》に成《な》つて、上《うへ》に載《の》せた彫像《てうざう》がありますまい。
 ……つひ向《むか》ふを、何《ど》うです、……大牛《おほうし》が一頭《いつとう》、此
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