』と樹《き》が喚《わめ》いた。
傘《からかさ》はぐる/\と段《だん》にかゝる、と苦《く》もなく攀上《よぢのぼ》るに不思議《ふしぎ》はない。濃《こまや》かな夜《よ》の色《いろ》が段《だん》を包《つゝ》んで、雲《くも》に乗《の》せたやうにすら/\と辷《すべ》らし上《あ》げる。気《き》の疾《はや》い、身軽《みがる》なのが、案山子《かゝし》の中《なか》にもあるにこそ。二《ふた》ツ三《み》ツ追続《おつつゞ》いて、すいと飛《と》んで、車《くるま》の上《うへ》を宙《ちう》から上《のぼ》つたのが、アノ土器色《かはらけいろ》の月《つき》の形《かたち》の灯《ともしび》をふわりと乗越《のりこ》す。
段《だん》の上《うへ》で、一体《いつたい》の石地蔵《いしぢざう》に逢《あ》つた。
『坊《ばう》ちやま、坊《ばう》ちやま。』と一《ひと》ツが言《い》ふ。
『さても迷惑《めいわく》、』
と仰有《おつしや》つたが、御手《おんて》の錫杖《しやくぢやう》をづいと上《あ》げて、トンと下《お》ろしざまに歩行《あゆ》び出《で》らるゝ……成程《なるほど》、御襟《おんゑり》の唾掛《よだれかけ》めいた切《きれ》が、ひらり/\と揺《
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