つ》けば、ころ/\と其《そ》の掌《たなそこ》に秘《ひ》めた采《さい》が鳴《な》つた。
『ござるか。』
『…………』
『ござるか、ござるか。』
と蚯蚓《みゝず》の這《は》ふやうな声《こゑ》が階《きざはし》の処《ところ》で聞《きこ》える。
『誰《たれ》だ。』
と、うつかり、づゝと出《で》ると、つひ忘《わす》れた……づらりと其処《そこ》に案山子《かかし》ども。


       バサリ


         三十三

 其《そ》の中《なか》の孰《いづ》れが言《ものい》ふ? 中気病《ちゆうきやみ》のやうな老《ふ》けた、舌《した》つ不足《たらず》で、
『おねんぎよ。』と言《い》ふ。
『おねんご。』
と又《また》訴《うつた》うる。……
 糠雨《ぬかあめ》の朧夜《おぼろよ》に、小《ちひさ》き山廓《さんかく》の祠《ほこら》の前《まへ》。破《やぶ》れ簑《みの》のしよぼ/\した渠等《かれら》の風躰《ふうてい》、……其《そ》の言《い》ふ処《ところ》が、お年貢《ねんぐ》、お年貢《ねんぐ》、と聞《きこ》えて、未進《みしん》の科条《くわでう》で水牢《みづらう》で死《し》んだ亡者《もうじや》か、百姓一揆《ひやくしや
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