4−32]※[#「彳+淌のつくり」、第3水準1−84−33]《さまよ》つたのを宿《やど》へ連《つれ》られてから、一寸々々《ちよい/\》出《で》て来《き》ては記憶《きおく》の裡《うち》へ影《かげ》を露《あら》はす。此《これ》と、城《じやう》ヶ|沼《ぬま》の黒坊主《くろばうず》の蒼《あを》ざめた面影《おもかげ》を除《のぞ》いては、誰《たれ》の顔《かほ》も判然《はつきり》覚《おぼ》えて居《ゐ》なかつた。
『燈明《とうみやう》を点《つ》けさつしやりませ。洋燈《らんぷ》では旦那様《だんなさま》の身躰《からだ》危《あぶな》いと言《い》ふで、種油《たねあぶら》提《さ》げて、燈心《とうしん》土器《かはらけ》を用意《ようい》して参《めえ》りやしたよ。追附《おつつ》け、寝道具《ねだうぐ》も運《はこ》ぶでがすで。気《き》を静《しづ》めて休《やす》まつしやりませ。……私等《わしら》も又《また》、油断《ゆだん》なく奥様《おくさま》の行衛《ゆくゑ》な捜《さが》しますだで、えら、心《こゝろ》を狂《くる》はさつしやりますな。』
と言《い》ふ/\燈心《とうしん》を点《とも》して、板敷《いたじき》の上《うへ》へ薄縁《うす
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