》も残《のこ》らず知《し》つてる、――指《ゆびさ》して言《い》へば、土地《とち》のものは残《のこ》らず知《し》つてる。けれども其《それ》を話《はな》すとなると、それ行《ゆ》け、救《すく》へで、松明《たいまつ》を振《ふ》り、鯨波《とき》の声《こゑ》を揚《あ》げて騒《さわ》ぐ、騒《さわ》いだ処《ところ》で所詮《しよせん》駄目《だめ》です。
 誰《たれ》が行《い》つても何者《なにもの》が騒《さわ》いでも、迚《とて》も彼《かれ》は救《すく》ひ出《だ》せない。
 おゝ! 君達《きみたち》にも粗《ほゞ》想像《さうざう》出来《でき》るか、お浦《うら》は魔《ま》に攫《さら》はれた、天狗《てんぐ》が掴《つか》んだ、……恐《おそ》らく然《さ》うだらう。……が、私《わたし》は此《これ》を地祇神《とちのかみ》の所業《しよげふ》と惟《おも》ふ。たゞし、鬼《おに》にしろ、神《かみ》にしろ、天狗《てんぐ》にしろ、何《なに》のためにお浦《うら》を攫《さら》つたか、其《そ》の意味《いみ》が分《わか》るまい、諸君《しよくん》には知《し》れなからう。
 独《ひと》りこれを知《し》るものは吾輩《わがはい》だよ。而《そ》して此
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