の崩《くづ》れとも見《み》えれば、尋常《じんじやう》遠出《とほで》の宿引《やどひき》とも見《み》えるが、旅籠屋《はたごや》に取《と》つては実際《じつさい》容易《ようい》な事《こと》では無《な》からう、――仮初《かりそめ》に宿《やど》つた夫婦《ふうふ》が、婦《をんな》は生死《しやうし》も行衛《ゆくゑ》も知《し》れず、男《をとこ》は其《それ》が為《ため》に、殆《ほと》んど狂乱《きやうらん》の形《かたち》で、夜昼《ひるよる》とも無《な》しに迷《まよ》ひ歩行《ある》く……
不面目《ふめんもく》ゆゑ、国許《くにもと》へ通知《つうち》は無用《むよう》、と当人《たうにん》は堅《かた》く留《と》めたものゝ、唯《はい》、然《さ》やうで、とばかりで旅籠屋《はたごや》では済《す》まして居《ゐ》られぬ。
で、宿《やど》の了見《れうけん》ばかりで電報《でんぱう》を打《う》つた、と見《み》えて其処《そこ》で出逢《であ》つた一群《いちぐん》の内《うち》には、お浦《うら》の親類《しんるゐ》が二人《ふたり》も交《まざ》つた、……此《こ》の中《なか》に居《ゐ》ない巡査《じゆんさ》などは、同《おな》じ目的《もくてき》で
前へ
次へ
全284ページ中156ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
泉 鏡花 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング