、別《べつ》の方面《はうめん》に向《むか》つて居《ゐ》るらしい。
 畝路《あぜみち》で出合《であひ》がしらに、一同《いちどう》は騒《さわ》ぎ立《た》てた。就中《なかんづく》、わざ/\東京《とうきやう》から出張《でば》つて来《き》た親類《しんるゐ》のものは、或《あるひ》は慰《なぐさ》め、或《あるひ》は励《はげ》まし、又《また》戒《いまし》めなどする種々《いろ/\》の言葉《ことば》を、立続《たてつゞ》けに※[#「口+堯」、135−15]舌《しやべ》つたが、頭《あたま》から耳《みゝ》にも入《い》れず……暗闇《くらやみ》の路次《ろじ》へ入《はい》つて、ハタと板塀《いたべい》に突当《つきあた》つたやうに、棒立《ぼうだ》ちに成《な》つて居《ゐ》たが、唐突《だしぬけ》に、片手《かたて》の掌《てのひら》を開《あ》けて、ぬい、と渠等《かれら》の前《まへ》へ突出《つきだ》した。坊主《ばうず》が自分《じぶん》に向《むか》つて同《おな》じ事《こと》を為《し》たのを、フト思出《おもひだ》したのが、殆《ほと》んど無意識《むいしき》に挙動《ふるまひ》に出《で》た。ト尠《すくな》からず一同《いちどう》を驚《おどろ》か
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