け》為《し》やうと思《おも》つて買《か》つた采《さい》だつたんです。
『都《みやこ》の人《ひと》、』
と坊主《ばうず》は又《また》更《あらた》めて、
『御身《おんみ》は木彫《きぼり》を行《や》るかな。』
『行《や》ります!』
と答《こた》へた時《とき》、私《わたし》は蘇生《よみがへ》つたやうに思《おも》つた。水《みづ》も白《しろ》く夜《よ》も明《あかる》く成《な》つた……お浦《うら》の行方《ゆくへ》も知《し》れ、其《そ》の在所《ありか》も分《わか》り、草鞋《わらぢ》や松明《たいまつ》で探《さぐ》つた処《ところ》で、所詮《しよせん》無駄《むだ》だと断念《あきらめ》も着《つ》く……其《それ》に、魔物《まもの》の手《て》から女房《にようばう》を取返《とりかへ》す手段《しゆだん》も出来《でき》た。我《わ》が手《て》に身代《みがはり》の像《ざう》を作《つく》れと云《い》ふ。敢《あへ》て黄金《こがね》を積《つ》め、山《やま》を崩《くづ》せ、と命《めい》ずるのでは無《な》いから、前途《ぜんと》に光明《くわうめい》が輝《かゞや》いて、心《こゝろ》は早《は》や明《あきら》かに渠《かれ》を救《すく》ふ途《
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