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然《さ》うかと思《おも》ふと、膝《ひざ》のあたりを、のそ/\と山猫《やまねこ》が這《は》つて通《とほ》る。階子《はしご》の下《した》から上《あが》つて来《く》るらしく、海豚《いるか》が躍《をど》るやうな影法師《かげぼふし》は狐《きつね》で。ひよいと飛上《とびあが》るのもあれば、ぐる/\と歩行《ある》き廻《まは》るのもあるし、胴《どう》を伸《の》ばして矢間《やざま》から衝《つ》と出《で》て、天守《てんしゆ》の棟《むね》で鯱立《しやちほこだ》ちに成《な》るのも見《み》える。
時々《とき/″\》ひら/\と烏《からす》が出《で》て、翼《つばさ》で、女《をんな》の胸《むね》を払《はた》く……
中《なか》に見《み》る目《め》も恐《おそろ》しかつたは、――茶《ちや》と白大斑《しろおほまだら》の獣《けもの》が一頭《いつとう》、天守《てんしゆ》の階子《はしご》を、のし/\と、蹄《ひづめ》で蹈《ふ》んで上《あが》つて、畳《たゝみ》を抱《だ》いて人《ひと》のやうに立上《たちあが》つた影法師《かげぼふし》が、女《をんな》の上《うへ》を横《よこ》に通《とほ》ると、姿《すがた》は隠《かく》れて、颯《さつ
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