が映《うつ》るのか凡《およ》そ五十畳《ごじふでう》ばかりの広間《ひろま》が、水底《みずそこ》から水面《すゐめん》へ、斜《なゝめ》に立懸《たてか》けたやうに成《な》つて、ふわ/\と動《うご》いて見《み》える。
他《ほか》に何《なに》も無《な》く誰《だれ》も居《を》らぬ。灯《あかり》唯《たゞ》一《ひと》つ有《あ》る。其《そ》の灯《あかり》が、背中《せなか》から淡《あは》く射《さ》して、真白《まつしろ》な乳《ちゝ》の下《した》を透《すか》す、……帯《おび》のあたりが、薄青《うすあを》く水《みづ》に成《な》つて、ゆら/\と流《なが》れるやうな、下《した》が裙《すそ》に成《な》つて、一寸《ちよつと》灯《ひ》の影《かげ》で胴《どう》から切《き》れた形《かたち》で、胸《むね》を反《そ》らした、顔《かほ》を仰向《あふむ》けに、悚然《ぞつ》とするやうな美《うつくし》い婦《をんな》。
処《ところ》で、水《みづ》へ映《うつ》る影《かげ》と言《い》へば、我《わ》が面影《おもかげ》を覗《のぞ》くやうに、沼《ぬま》に向《むか》つて、顔《かほ》を合《あ》はせるやうに見《み》えるのであらう、と思《おも》ふたが違《
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