い》はれねえ、其《そ》の女《をんな》の容色《きりやう》だで……色《いろ》も恋《こひ》も無《な》けれども、絵《ゑ》を見《み》るやうで、何《なん》とも其《そ》の、美《うつく》しさが忘《わす》れられぬ。
化《ば》けたなら化《ば》けたで可《よし》、今夜《こんや》は蛇《じや》に成《な》らうも知《し》んねえが、最《も》う一晩《ひとばん》出懸《でか》けて見《み》べい。」……
で、又《また》てく/\と沼《ぬま》へ出向《でむ》く、と一刷《ひとは》け刷《は》いた霞《かすみ》の上《うへ》へ、遠山《とほやま》の峰《みね》より高《たか》く引揚《ひきあ》げた、四手《よつで》を解《と》いて沈《しづ》めたが、何《ど》の道《みち》持《も》つては帰《かへ》られぬ獲物《えもの》なれば、断念《あきら》めて、鯉《こひ》が黄金《きん》で鮒《ふな》が銀《ぎん》でも、一向《いつかう》に気《き》に留《と》めず、水《みづ》に任《まか》せて夜《よ》を更《ふか》す。
風《かぜ》が吹《ふ》き、風《かぜ》が凪《な》ぎ、水《みづ》が動《うご》き、水《みづ》が静《しづ》まる。大沼《おほぬま》の刻限《こくげん》も、村里《むらざと》と変《かは》り
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