つと》も身体《からだ》を蓋《ふた》に為《し》て畚《びく》の魚《さかな》を抱《だ》いてゞも居《ゐ》れば、如何《いか》に畜生《ちくしやう》に業通《ごふつう》が有《あ》つても、まさかに骨《ほね》を徹《とほ》しては抜《ぬ》くまい、と一心《いつしん》に守《まも》つて居《ゐ》れば、沼《ぬま》の真中《まんなか》へひら/\と火《ひ》を燃《もや》す、はあ、変《へん》だわ、と気《き》が散《ち》ると、立処《たちどころ》に鯉《こひ》が失《う》せる。其《そ》の術《て》で行《ゆ》かねば、業《わざ》を変《か》へて、何処《どこ》とも知《し》らず、真夜中《まよなか》にアハヽアハヽ笑《わら》ひをる、吃驚《びつくり》すると鮒《ふな》が消《き》える、――此方《こつち》も自棄腹《やけばら》の胴《どう》を極《き》めて、少々《せう/\》脇《わき》の下《した》を擽《くすぐ》られても、堪《こら》へて静《じつ》として畚《びく》を守《まも》れば、さすが目《め》に見《み》せて、尖《とが》つた面《つら》、長《なが》い尻尾《しつぽ》は出《だ》さぬけれど、さて然《さ》うして見《み》た日《ひ》には、足代《あじろ》を組《く》んで四手《よつで》を沈《し
前へ
次へ
全284ページ中118ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
泉 鏡花 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング