》まで畚《びく》の重《おも》い内《うち》は張合《はりあひ》もあつた。けれども、次第《しだい》に畜生《ちくしやう》、横領《わうりやう》の威《ゐ》を奮《ふる》つて、宵《よひ》の内《うち》からちよろりと攫《さら》ふ、漁《すなど》る後《あと》から嘗《な》めて行《ゆ》く……見《み》る/\四《よ》つ手網《であみ》の網代《あじろ》の上《うへ》で、腰《こし》の周囲《まはり》から引奪《ひつたく》る。
最《もつと》も其《そ》の時《とき》は、何《なに》となく身近《みぢか》に物《もの》の襲《おそ》ひ来《く》る気勢《けはひ》がする。左《ひだり》の手《て》がびくりとする時《とき》、左《ひだり》から丁手掻《ちよつかい》で、右《みぎ》の腕《うで》がぶるつと為《す》る時《とき》、右《みぎ》の方《はう》から狙《ねら》ふらしい。頸首《ゑりくび》脊筋《せすぢ》の冷《ひや》りと為《す》るは、後《うしろ》に構《か》まへてござる奴《やつ》。天窓《あたま》から悚然《ぞつ》とするのは、惟《おも》ふに親方《おやかた》が御出張《ごしゆつちやう》かな。いや早《は》や、其《それ》と知《し》りつゝ、さつ/\と持《も》つて行《ゆ》かれる。最《も
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