《きんがうきんざい》、私《わし》の他《ほか》に無《な》いのぢやが、……お前様《めえさま》が見《み》さしつた、城《じやう》ヶ|沼《ぬま》の四手場《よつでば》の足代《あじろ》の上《うへ》の黒坊主《くろばうず》と……はてな……其《そ》の坊様《ばうさま》は大《おほき》い割《わり》に、色《いろ》が蒼《あを》ざめては居《を》らんかの。」
二十
「あゝ、蒼《あを》ざめた、」
と雪枝《ゆきえ》は起直《おきなほ》つて言《い》つた。
「鼻《はな》の円《まる》い、額《ひたひ》の広《ひろ》い、口《くち》の大《おほき》い、……其《そ》の顔《かほ》を、然《しか》も厭《いや》な色《いろ》の火《ひ》が燃《も》えたので、暗夜《やみ》に見《み》ました。……坊主《ばうず》は狐火《きつねび》だ、と言《い》つたんです。」
「それ/\、其《そ》の坊様《ばうさま》なら、宵《よひ》の口《くち》に私《わし》が頼《たの》んで四手場《よつでば》に居《ゐ》て貰《もら》ふたのぢや……、はあ、其処《そこ》へお前様《めえさま》が行逢《ゆきあ》はしつたの。はて、どうも、妙智力《めうちりき》、旦那様《だんなさま》と私《わし》は縁
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