う》の行衛《ゆくゑ》を捜《さが》すのに、火《ひ》の中《なか》だつて厭《いと》ひは為《し》ない。づか/\踏込《ふみこ》まうとすると、
『あゝ、深《ふか》いぞ、誰《たれ》ぢや、水《みづ》へ……』
と其時《そのとき》、暗《くら》がりから、しやがれた声《こゑ》を掛《か》けて、私《わたし》を呼留《よびと》めたものがあります。
 暗《やみ》に透《す》かすと、背《せ》の高《たか》い大《おほき》な坊主《ばうず》が居《ゐ》て、地《ち》から三尺《さんじやく》ばかり高《たか》い処《ところ》、宙《ちう》で胡座《あぐら》掻《か》いたも道理《だうり》、汀《みぎは》へ足代《あじろ》を組《く》んで板《いた》を渡《わた》した上《うへ》に構込《かまへこ》んで、有《あ》らう事《こと》か、出家《しゆつけ》の癖《くせ》に、……水《みづ》の中《なか》へは広《ひろ》い四手網《よつであみ》が沈《しづ》めてある。」
 老爺《ぢゞい》は眉毛《まゆげ》をひくつかせた。
「はての。」


       城《じやう》ヶ|沼《ぬま》


         十九

「其《そ》の入道《にふだう》の、のそ/\と身動《みうご》きするのが、暗夜《やみ》の
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