ない。首《くび》を締《し》めて殺《ころ》さば殺《ころ》せで、這出《はひだ》すやうに頭《あたま》を突附《つきつ》けると、真黒《まつくろ》に成《な》つて小山《こやま》のやうな機関車《きくわんしや》が、づゝづと天窓《あたま》の上《うへ》を曳《ひ》いて通《とほ》ると、柔《やはらか》いものが乗《の》つたやうな気持《きもち》で、胸《むね》がふわ/\と浮上《うきあが》つて、反身《そりみ》に手足《てあし》をだらりと下《さ》げて、自分《じぶん》の身躰《からだ》が天井《てんじやう》へ附着《くつつ》く、と思《おも》ふとはつと目《め》が覚《さ》める、……夜《よ》は未《ま》だ明《あ》けないのです。
同《おな》じやうな切《せつ》ない夢《ゆめ》を、幾度《いくたび》となく続《つゞ》けて見《み》て、半死半生《はんしはんせい》の躰《てい》で漸《や》つと我《われ》に返《かへ》つた時《とき》、亭主《ていしゆ》が、
『御国許《おくにもと》へ電報《でんぱう》をお掛《か》け被成《なさ》りましては如何《いかゞ》でござりませう。』と枕許《まくらもと》に坐《すは》つて居《ゐ》ました。
『馬鹿《ばか》な。』
と一言《いちごん》のもとに卻
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