してくれ、お浦《うら》、何《ど》うしたんだ。」
と今《いま》は慌《あはたゞ》しく成《な》つた。青年《わかもの》は矢庭《やには》に頸《うなじ》を抱《だ》き、膝《ひざ》なりに背《せ》を向《むか》ふへ捻廻《ねぢま》はすやうにして、我《わ》が胸《むね》を前《まへ》へ捻《ひね》つて、押仰向《おしあふむ》けた婦《をんな》の顔《かほ》。
今《いま》も目《め》は塞《ふさ》がず、例《れい》の眸《みは》つて、些《さ》の顰《ひそ》むべき悩《なや》みも無《な》げに、額《ひたひ》に毛《け》ばかりの筋《すぢ》も刻《きざ》まず、美《うつく》しう優《やさし》い眉《まゆ》の展《の》びたまゝ、瞬《またゝき》もしないで、其《そ》のまゝ見据《みす》えた。
其《そ》の顔《かほ》と、此《こ》の時《とき》、引返《ひきかへ》した身動《みじろ》ぎに、飜《ひるがへ》つた褄《つま》の乱《みだ》れに、雪《ゆき》のやうに顕《あら》はれた円《まる》い膝頭《ひざがしら》……を一目《ひとめ》見《み》るや、
「うむ、」と一声《ひとこゑ》、※[#「てへん+堂」、第4水準2−13−41]《だう》と枯蘆《かれあし》に腰《こし》を落《おと》して、殆《ほと
前へ
次へ
全284ページ中11ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
泉 鏡花 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング