》んど痙攣《けいれん》を起《おこ》した如《ごと》く、足《あし》を投出《なげだ》してぶる/\と震《ふる》へて、
「違《ちが》つた/\。造《つく》りものだ、拵《こしら》へものだ、彫像《てうざう》だ。昨夜《ゆふべ》持《も》つて行《い》つた形代《かたしろ》だ、こりや、……おゝ。」
 戦《おのゝ》く手《て》に、婦《をんな》の胸《むね》を確乎《しつか》と圧《お》せば、膨《ふく》らかな襟《ゑり》のあたりも、掌《てのひら》に堅《かた》く且《か》つ冷《つめ》たいのであつた。
「何《なん》だ、又《また》これを持《も》つて帰《かへ》るほどなら、誰《たれ》が命《いのち》がけに成《な》つて、這麼《こんな》ものを拵《こしら》へやう。……誑《たぶらか》しやあがつたな! 山猫《やまねこ》め、狐《きつね》め、野狸《のだぬき》め。」
と邪慳《じやけん》に、胸先《むなさき》を取《と》つて片手《かたて》で引立《ひつた》てざまに、渠《かれ》は棒立《ぼうだ》ちにぬつくり立《た》つ。可憐《あはれ》や艶麗《あでやか》な女《をんな》の姿《すがた》は、背筋《せすぢ》を弓形《ゆみなり》、裳《もすそ》を宙《ちう》に、縊《くび》られた如《ごと
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