に似ている。悪孫八が勝ち、無理が通った。それも縁であろう。越後|巫女《みこ》は、水飴《みずあめ》と荒物を売り、軒に草鞋《わらじ》を釣《つる》して、ここに姥塚《うばづか》を築くばかり、あとを留《とど》めたのであると聞く。

 ――前略、当寺檀那、孫八どのより申上げ候。入院中流産なされ候御婦人は、いまは大方に快癒《かいゆ》、鬱散《うっさん》のそとあるきも出来候との事、御安心下され度《たく》候趣、さて、ここに一昨夕、大夕立これあり、孫八老、其《そ》の砌《みぎり》某所墓地近くを通りかかり候折から、天地|晦冥《かいめい》、雹《ひょう》の降ること凄《すさ》まじく、且《かつ》は電光の中《うち》に、清げなる婦人一|人《にん》、同所、鳥博士の新墓の前に彳《たたず》み候が、冷く莞爾《にこり》といたし候とともに、手の壺|微塵《みじん》に砕け、一塊の鮮血、あら土にしぶき流れ、降積りたる雹を染め候が、赤き霜柱の如く、暫時《しばし》は消えもやらず有之《これあり》候よし、貧道など口にいたし候もいかが、相頼まれ申候ことづてのみ、いずれ仏菩薩の思召す処にはこれあるまじく、奇《く》しく厳《いつく》しき明神の嚮導《きょうど
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