神鷺之巻
泉鏡花

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)白鷺明神《しらさぎみょうじん》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)偶然|知己《ちかづき》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「彳+淌のつくり」、第3水準1−84−33]※[#「彳+羊」、第3水準1−84−32]《さまよ》う
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       一

 白鷺明神《しらさぎみょうじん》の祠《ほこら》へ――一緑の森をその峰に仰いで、小県銑吉《おがたせんきち》がいざ詣でようとすると、案内に立ちそうな村の爺さんが少なからず難色を顕《あら》わした。
 この爺さんは、
「――おらが口で、更《あらた》めていうではねえがなす、内の媼《ばばあ》は、へい一通りならねえ巫女《いちこ》でがすで。」……
 若い時は、渡り仲間の、のらもので、猟夫《かりゅうど》を片手間に、小賭博《こばくち》なども遣《や》るらしいが、そんな事より、古女房が巫女というので、聞くものに一種の威力があったのはいうまでもない。
 ま
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