棲《す》むもののような気がするし、森の香の、時々峰からおろす松風と一所に通って来るのも、水神、山の神に魅入られたのかも分らない。ええ、因果と業。不具《かたわ》でも、虫でもいい。鳶《とんび》鴉《からす》でも、鮒《ふな》、鰌《どじょう》でも構わない。その子を連れて、勧進比丘尼《かんじんびくに》で、諸国を廻《めぐ》って親子の見世ものになったらそれまで、どうなるものか。……そうすると、気が易くなりました。」
「ああ、観音の利益だなあ。」
つと顔を背けると、肩をそいで、お誓は、はらはらと涙を落した。
「その御利益を、小県さん、頂いてだけいればよかったんですけれど――早くから、関屋からこの辺かけて、鳥の学者、博士が居ます。」
「…………」
「鳥の巣に近づくため、撃つために、いろいろな……あんな形《なり》もする、こうもする。……頭に樹の枝をかぶったり、かずらや枯葉を腰へ巻いたり……何の気もなしに、孫八ッて……その飴屋の爺さんが夜話するのを、一言……」
(!…………)
「焼火箸を脇の下へ突貫《つきぬ》かれた気がしました。扇子《おうぎ》をむしって棄《す》ちょうとして、勿体ない、観音様に投げうち
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