や、ちと大道うらないに似て来たかね。」
 袖を開いて扇を使った。柳の影が映りそうで、道得《いいえ》て、いささか可《よし》と思ったらしい。
「鶴を視《み》て懐姙した験《げん》はいくらもある。いわゆる、もうし子だとお思いなさい。その上、面倒な口を利く父親なしに、お誓さん一人で育てたら、それが生一本の田沢家の血統じゃありませんか。そうだ、悪魔などと言ったのは、私のあやまり、豊年の何とかいう雪が降って、節分には、よく降るんです。正に春立《りっしゅん》ならんとする時、牡丹に雪の瑞《ずい》といい、地蔵菩薩の祥《しょう》といい、あなたは授《さずか》りものをしたんじゃないか、確《たしか》にそうだ、――お誓さん。」
 お誓は淡《うす》くまた瞼《まぶた》を染めた。
「そんな、あの、大それた、高望みはしませんけれど、女の子かも知れないと思いました。五日、七日《なぬか》、二夜《ふたよ》、三夜、観音様の前に静《じっ》としていますうちに、そういえば、今時、天狗《てんぐ》も※[#「けものへん+非」、91−16]々《ひひ》も居まいし、第一|獣《けもの》の臭気《におい》がしません。くされたというは心持で、何ですか、水に
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