」、第4水準2−78−12]《むし》る、と白い優しい肩から脇の下まで仰向《あおむ》けに露《あら》われ、乳へ膝を折上げて、くくられたように、踵《かかと》を空へ屈《かが》めた姿で、柔《やわらか》にすくんでいる。「さ、その白《しら》ッこい、膏《あぶら》ののった双ももを放さっしゃれ。獣《けだもの》は背中に、鳥は腹に肉があるという事いの。腹から割《さ》かっしゃるか、それとも背から解《ひら》くかの、」と何と、ひたわななきに戦《わなな》く、猟夫の手に庖丁を渡して、「えい、それ。」媼が、女の両脚を餅のように下へ引くとな、腹が、ふわりと動いて胴がしんなりと伸び申したなす。
「観音様の前だ、旦那、許さっせえ。」
御廚子の菩薩《ぼさつ》は、ちらちらと蝋燭の灯に瞬きたまう。
――茫然《ぼうぜん》として、銑吉は聞いていた――
血は、とろとろと流れた、が、氷ったように、大腸小腸《おおわたこわた》、赤肝《あかぎも》、碧胆《あおぎも》、五臓は見る見る解き発《あば》かれ、続いて、首を切れと云う。その、しなりと俎の下へ伸びた皓々《しろじろ》とした咽喉首《のどくび》に、触ると震えそうな細い筋よ、蕨《わらび》、ぜんまい
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