ば》の逆戻《ぎやくもどり》。」
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東京《とうきやう》の區《く》到《いた》る處《ところ》にいづれも一二《いちに》の勸工場《くわんこうば》あり、皆《みな》入口《いりぐち》と出口《でぐち》を異《こと》にす、獨《ひと》り牛込《うしごめ》の勸工場《くわんこうば》は出口《でぐち》と入口《いりぐち》と同一《ひとつ》なり、「だから不思議《ふしぎ》さ。」と聞《き》いて見《み》れば詰《つま》らぬこと。
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それから、
「藪蕎麥《やぶそば》の青天井《あをてんじやう》。」
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下谷《したや》團子坂《だんござか》の出店《でみせ》なり。夏《なつ》は屋根《やね》の上《うへ》に柱《はしら》を建《た》て、席《むしろ》を敷《し》きて客《きやく》を招《せう》ず。時々《とき/″\》夕立《ゆふだち》に蕎麥《そば》を攫《さら》はる、とおまけ[#「おまけ」に傍点]を謂《い》はねば不思議《ふしぎ》にならず。
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「奧行《おくゆき》なしの牛肉店《ぎうにくてん》。」
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(いろは)のことなり、唯《と》見《み》れば大廈《たいか》嵬然《
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