はさ》む梢《こずゑ》にざツとかぶさる中《なか》に、取《と》つて食《く》はうと梟《ふくろふ》が鳴《な》きぬ。
恁《か》くは森《もり》のおどろ/\しき姿《すがた》のみ、大方《おほかた》の風情《ふぜい》はこれに越《こ》えて、朝夕《あさゆふ》の趣《おもむき》言《い》ひ知《し》らずめでたき由《よし》。
曙《あけぼの》は知《し》らず、黄昏《たそがれ》に此《こ》の森《もり》の中《なか》辿《たど》ることありしが、幹《みき》に葉《は》に茜《あかね》さす夕日《ゆふひ》三筋《みすぢ》四筋《よすぢ》、梢《こずゑ》には羅《うすもの》の靄《もや》を籠《こ》めて、茄子畑《なすばたけ》の根《ね》は暗《くら》く、其《そ》の花《はな》も小《ちひ》さき實《み》となりつ。
棚《たな》して架《かく》るとにもあらず、夕顏《ゆふがほ》のつる西家《せいか》の廂《ひさし》を這《は》ひ、烏瓜《からすうり》の花《はな》ほの/″\と東家《とうか》の垣《かき》に霧《きり》を吐《は》きぬ。強《し》ひて我《われ》句《く》を求《もと》むるにはあらず、藪《やぶ》には鶯《うぐひす》の音《ね》を入《い》るゝ時《とき》ぞ。
日《ひ》は茂《しげ》れる
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