の黒板《こくばん》へ白墨《チヨオク》を手《て》にして、何事《なにごと》をか記《しる》すのです、――勿論《もちろん》、武裝《ぶさう》のまゝでありました。
何《なん》にも、黒板《こくばん》へ顯《あらは》れません。
續《つゞ》いて一人《ひとり》、また同《おな》じ事《こと》をしました。
が、何《なん》にも黒板《こくばん》へ顯《あらは》れません。
十六|人《にん》が十六|人《にん》、同《おな》じやうなことをした。最後《さいご》に、肩《かた》と頭《かしら》と一團《いちだん》に成《な》つたと思《おも》ふと――其《そ》の隊長《たいちやう》と思《おも》ふのが、衝《つゝ》と面《おもて》を背《そむ》けました時《とき》――苛《いら》つやうに、自棄《やけ》のやうに、てん/″\に、一齊《いちどき》に白墨《チヨオク》を投《な》げました。雪《ゆき》が群《むらが》つて散《ち》るやうです。
「氣《き》をつけ。」
つゝと鷲《わし》が片翼《かたつばさ》を長《なが》く開《ひら》いたやうに、壇《だん》をかけて列《れつ》が整《とゝの》ふ。
「右《みぎ》向《む》け、右《みぎ》――前《まへ》へ!」
入口《いりくち》が背後《
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