わたし》は雪籠《ゆきごも》りの許《ゆるし》を受《う》けようとして、たど/\と近《ちか》づきましたが、扉《とびら》のしまつた中《なか》の樣子《やうす》を、硝子窓越《がらすまどごし》に、ふと見《み》て茫然《ばうぜん》と立《た》ちました。
眞中《まんなか》の卓子《テエブル》を圍《かこ》んで、入亂《いりみだ》れつゝ椅子《いす》に掛《か》けて、背嚢《はいなう》も解《と》かず、銃《じう》を引《ひき》つけたまゝ、大皿《おほざら》に裝《よそ》つた、握飯《にぎりめし》、赤飯《せきはん》、煮染《にしめ》をてん/″\に取《と》つて居《ゐ》ます。
頭《かしら》を振《ふ》り、足《あし》ぶみをするのなぞ見《み》えますけれども、聲《こゑ》は籠《こも》つて聞《きこ》えません。
――わあ――
と罵《のゝし》るか、笑《わら》ふか、一《ひと》つ大聲《おほごゑ》が響《ひゞ》いたと思《おも》ふと、あの長靴《ながぐつ》なのが、つか/\と進《すゝ》んで、半月形《はんげつがた》の講壇《かうだん》に上《のぼ》つて、ツと身《み》を一方《いつぱう》に開《ひら》くと、一人《ひとり》、眞《まつ》すぐに進《すゝ》んで、正面《しやうめん》
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