うか》を、何處《どこ》へ行《い》つたか分《わか》りません。
途端《とたん》に……
ざつ/\と、あの續《つゞ》いた渦《うづ》が、一《ひと》ツづゝ數萬《すうまん》の蛾《が》の群《むらが》つたやうな、一人《ひとり》の人《ひと》の形《かたち》になつて、縱隊一列《じうたいいちれつ》に入《はひ》つて來《き》ました。雪《ゆき》で束《つか》ねたやうですが、いづれも演習行軍《えんしふかうぐん》の裝《よそほひ》して、眞先《まつさき》なのは刀《たう》を取《と》つて、ぴたりと胸《むね》にあてて居《ゐ》る。それが長靴《ながぐつ》を高《たか》く踏《ふ》んでづかりと入《はひ》る。あとから、背嚢《はいなう》、荷銃《になひづつ》したのを、一隊《いつたい》十七|人《にん》まで數《かぞ》へました。
うろつく者《もの》には、傍目《わきめ》も觸《ふ》らず、肅然《しゆくぜん》として廊下《らうか》を長《なが》く打《う》つて、通《とほ》つて、廣《ひろ》い講堂《かうだう》が、青白《あをじろ》く映《うつ》つて開《ひら》く、其處《そこ》へ堂々《だう/\》と入《はひ》つたのです。
「休《やす》め――」
……と聲《こえ》する。
私《
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