》、最後《さいご》かと思《おも》ふ時《とき》に、鎭守《ちんじゆ》の社《やしろ》が目《め》の前《まへ》にあることに心着《こゝろづ》いたのであります。同時《どうじ》に峰《みね》の尖《とが》つたやうな眞白《まつしろ》な杉《すぎ》の大木《たいぼく》を見《み》ました。
 雪難之碑《せつなんのひ》のある處《ところ》――
 天狗《てんぐ》――魔《ま》の手《て》など意識《いしき》しましたのは、其《そ》の樹《き》のせゐかも知《し》れません。たゞし此《これ》に目標《めじるし》が出來《でき》たためか、背《せ》に根《ね》が生《は》えたやうに成《な》つて、倒《たふ》れて居《ゐ》る雪《ゆき》の丘《をか》の飛移《とびうつ》るやうな思《おも》ひはなくなりました。
 洵《まこと》は、兩側《りやうがは》にまだ家《いへ》のありました頃《ころ》は、――中《なか》に旅籠《はたご》も交《まじ》つて居《ゐ》ます――一面識《いちめんしき》はなくつても、同《おな》じ汽車《きしや》に乘《の》つた人《ひと》たちが、疎《まばら》にも、それ/″\の二階《にかい》に籠《こも》つて居《ゐ》るらしい、其《そ》れこそ親友《しんいう》が附添《つきそ》つ
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