て居《ゐ》るやうに、氣丈夫《きぢやうぶ》に頼母《たのも》しかつたのであります。尤《もつと》も其《それ》を心《こゝろ》あてに、頼《たの》む。――助《たす》けて――助《たす》けて――と幾度《いくたび》か呼《よ》びました。けれども、窓《まど》一《ひと》つ、ちらりと燈火《ともしび》の影《かげ》の漏《も》れて答《こた》ふる光《ひかり》もありませんでした。聞《きこ》える筈《はず》もありますまい。
 いまは、唯《たゞ》お米《よね》さんと、間《あひだ》に千尺《せんじやく》の雪《ゆき》を隔《へだ》つるのみで、一人《ひとり》死《し》を待《ま》つ、……寧《むし》ろ目《め》を瞑《ねむ》るばかりに成《な》りました。
 時《とき》に不思議《ふしぎ》なものを見《み》ました――底《そこひ》なき雪《ゆき》の大空《おほぞら》の、尚《な》ほ其《そ》の上《うへ》を、プスリと鑿《のみ》で穿《うが》つて其《そ》の穴《あな》から落《お》ちこぼれる……大《おほ》きさは然《さ》うです……蝋燭《らふそく》の灯《ひ》の少《すこ》し大《おほき》いほどな眞蒼《まつさを》な光《ひかり》が、ちら/\と雪《ゆき》を染《そ》め、染《そ》めて、ちら/\
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