すが、勢《いきほひ》よく歩行《ある》いて居《ゐ》るうちには温《あたゝか》く成《な》ります、ほか/\するくらゐです。
やがて、六七|町《ちやう》潛《もぐ》つて出《で》ました。
まだ此《こ》の間《あひだ》は氣丈夫《きぢやうぶ》でありました。町《まち》の中《うち》ですから兩側《りやうがは》に家《いへ》が續《つゞ》いて居《を》ります。此《こ》の邊《へん》は水《みづ》の綺麗《きれい》な處《ところ》で、軒下《のきした》の兩側《りやうがは》を、清《きよ》い波《なみ》を打《う》つた小川《をがは》が流《なが》れて居《ゐ》ます。尤《もつと》も其《そ》れなんぞ見《み》えるやうな容易《やさし》い積《つも》り方《かた》ぢやありません。
御存《ごぞん》じの方《かた》は、武生《たけふ》と言《い》へば、あゝ、水《みづ》のきれいな處《ところ》かと言《い》はれます――此《こ》の水《みづ》が鐘《かね》を鍛《きた》へるのに適《てき》するさうで、釜《かま》、鍋《なべ》、庖丁《はうてう》、一切《いつさい》の名産《めいさん》――其《そ》の昔《むかし》は、聞《きこ》えた刀鍛冶《かたなかぢ》も住《す》みました。今《いま》も鍛冶
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