ますと、
「左樣《さやう》か。」
 と言《い》つて、此《これ》から滔々《たふ/\》と辯《べん》じ出《だ》した。其《そ》の辯《べん》ずるのが都會《とくわい》に於《お》ける私《わたし》ども、なかま、なかまと申《まを》して私《わたし》などは、ものの數《かず》でもないのですが、立派《りつぱ》な、畫《ゑ》の畫伯方《せんせいがた》の名《な》を呼《よ》んで、片端《かたつぱし》から、奴《やつ》がと苦《にが》り、彼《あれ》め、と蔑《さげす》み、小僧《こぞう》、と呵々《から/\》と笑《わら》ひます。
 私《わたし》は五六|尺《しやく》飛退《とびさが》つて叩頭《おじぎ》をしました。
「汽車《きしや》の時間《じかん》がございますから。」
 お米《よね》さんが、送《おく》つて出《で》ました。花菜《はなな》の中《なか》を半《なかば》の時《とき》、私《わたし》は香《か》に咽《むせ》んで、涙《なみだ》ぐんだ聲《こゑ》して、
「お寂《さび》しくおいでなさいませう。」
 と精一杯《せいいつぱい》に言《い》つたのです。
「いゝえ、兄《あに》が一緒《いつしよ》ですから……でも大雪《おほゆき》の夜《よ》なぞは、町《まち》から道
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