訊《たづ》ねました。
「三碧《さんぺき》なう。」
と尼《あま》さんが言《い》ひました。
「貴女《あなた》は?」
「私《わたし》は一《ひと》つ上《うへ》……」
「四緑《しろく》なう。」
と尼《あま》さんが又《また》言《い》ひました。
――略《りやく》して申《まを》すのですが、其處《そこ》へ案内《あんない》もなく、づか/\と入《はひ》つて來《き》て、立状《たちざま》に一寸《ちよつと》私《わたし》を尻目《しりめ》にかけて、爐《ろ》の左《ひだり》の座《ざ》についた一|人《にん》があります――山伏《やまぶし》か、隱者《いんじや》か、と思《おも》ふ風采《ふうさい》で、ものの鷹揚《おうやう》な、惡《わる》く言《い》へば傲慢《がうまん》な、下手《へた》が畫《ゑ》に描《か》いた、奧州《あうしう》めぐりの水戸《みと》の黄門《くわうもん》と言《い》つた、鼻《はな》の隆《たか》い、髯《ひげ》の白《しろ》い、早《は》や七十ばかりの老人《らうじん》でした。
「此《これ》は關《せき》さんか。」
と、いきなり言《い》ひます。私《わたし》は吃驚《びつくり》しました。
お米《よね》さんが、しなよく頷《うなづ》き
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