《ゆき》の凍《い》てた時《とき》、こんな晩《ばん》には、柄《がら》にもない高足駄《たかあしだ》さへ穿《は》いて居《ゐ》たのに、轉《ころ》びもしないで、然《しか》も遊《あそ》びに更《ふ》けた正月《しやうぐわつ》の夜《よ》の十二|時過《じす》ぎなど、近所《きんじよ》の友《とも》だちにも別《わか》れると、唯《たゞ》一人《ひとり》で、白《しろ》い社《やしろ》の廣《ひろ》い境内《けいだい》も拔《ぬ》ければ、邸町《やしきまち》の白《しろ》い長《なが》い土塀《どべい》も通《とほ》る。………ザヾツ、ぐわうと鳴《な》つて、川波《かはなみ》、山颪《やまおろし》とともに吹《ふ》いて來《く》ると、ぐる/\と※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]《まは》る車輪《しやりん》の如《ごと》き濃《こ》く黒《くろ》ずんだ雪《ゆき》の渦《うづ》に、くる/\と舞《ま》ひながら、ふは/\と濟《す》まアして内《うち》へ歸《かへ》つた――夢《ゆめ》ではない。が、あれは雪《ゆき》に靈《れい》があつて、小兒《こども》を可愛《いとし》がつて、連《つ》れて歸《かへ》つたのであらうも知《し》れない。
「あゝ、酷《ひど》いぞ。」
ハツと
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