らば、まあ結構だと思って、新さん、あなたの処へおたよりをするのにも、段々|快《い》い方ですからお案じなさらないように、そういってあげましたっけ。
そうすると、つい先月のはじめにねえ、少しいつもより容子《ようす》が悪くおなんなすったから、急いで医者に診せましたの。はじめて行った時は、何でもなかったんですが、二度目ですよ。二度目にね、新さん、一所にお医者様の処へ連れて行ってあげた時、まあ、どうでしょう。」
高津はじっと予を見たり。膝にのせたる掌《たなそこ》の指のさきを動かしつつ、
「あすこの、あればかりの石壇にお弱んなすッて、上の壇が一段、どうしてもあがり切れずに呼吸《いき》をついていらっしゃるのを、抱いて上げた時は、私も胸を打たれたんですよ。
まあ可《い》い、可い! ここを的に取って看病しよう。こん度来るまでにはきっと独《ひとり》でお上《あが》んなさるようにして見せよう。そうすりゃ素人目にも快《よ》くおなんなすった解《わか》りが早くッて、結句|張合《はりあい》があると思ったんですが、もうお医者様へいらっしゃることが出来たのはその日ッきり。新さん、やっぱりいけなかったの。
お医者様
前へ
次へ
全20ページ中5ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
泉 鏡花 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング