ら》埋《うず》めて、小《ちいさ》やかにぞ臥したりける。
思いしよりなお瘠《や》せたり。頬のあたり太《いた》く細りぬ。真白うて玉なす顔、両の瞼《まぶた》に血の色染めて、うつくしさ、気高さは見まさりたれど、あまりおもかげのかわりたれば、予は坐《すわ》りもやらで、襖の此方《こなた》に彳《たたず》みつつ、みまもりてそれをミリヤアドと思う胸はまずふたがりぬ。
「さ、」
と座蒲団《ざぶとん》差《さし》よせたれば、高津とならびて、しおしおと座につきぬ。
顔見ば語らむ、わが名呼ばれむ、と思い設けしはあだなりき。
寝返ることだに得《え》せぬ人の、片手の指のさきのみ、少しく衾《ふすま》の外に出《いだ》したる、その手の動かむともせず。
瞳キト据《すわ》りたれば、わが顔見られむと堪《こら》えずうつむきぬ。ミリヤアドとばかりもわが口には得《え》出ででなむ、強いて微笑《ほほえ》みしが我ながら寂しかりき。
高津の手なる桃色の絹の手巾《ハンケチ》は、はらりと掌《たなそこ》に広がりて、軽《かろ》くミリヤアドの目のあたり拭《ぬぐ》いたり。
「汗ですよ、熱がひどうござんすから。」
頬のあたりをまた拭いぬ。
「
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