しゃるのは、新さん、あなたの事ですよ。」
「僕を。」
「ですからどうにかして気の休まるようにしてあげて下さいな。心配をかけるのは、新さんあなたが、悪いんですよ。」
「え。」
「あのね、始終そういっていらっしゃるの。(私が居る内は可《い》いけれど、居なくなると、上杉さんがどんなことをしようも知れない)ッて。」
「何を僕が。」
予は顔の色かわらずやと危ぶみしばかりなりき。背《せな》はひたと汗になりぬ。
「いいえ、ほんとうでしょう、ほんとうに違いませんよ。それに違いないお顔ですもの。私が見ましてさえ、何ですか、いつも、もの思《おもい》をして、うつらうつらとしていらっしゃるようじゃありませんか。誠にお可哀相《かわいそう》な様《よう》ですよ。ミリヤアドもそういいましたっけ。(私が慰めてやらなければ、あの児《こ》はどうするだろう)ッて。何もね、秘密なことを私が聞こうじゃありませんけれど、なりますことなら、ミリヤアドに安心をさしてあげて下さいな。え、新さん、(私が居さえすりゃ、大丈夫だけれど、どうも案じられて。)とおっしゃるんですから、何とかしておあげなさいな。あなたにゃその工夫があるでしょう、上
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