するんじゃないが、御新造様があんまりだからツイ私だってむっとしたわね。行《ゆき》がかりだもの、お前さん、この様子じゃあ皆《みんな》こりゃアノ児《こ》のせいだ。小児《こども》の癖にいきすぎな、いつのまにませたろう、取っつかまえてあやまらせてやろう。私ならぐうの音《ね》も出させやしないと、まあ、そう思ったもんだから、ちっとも言分は立たないし、跋《ばつ》も悪しで、あっちゃアお仲さんにまかしておいて、お前さんを探して来たんだがね。
 逢って見ると、どうして、やっぱり千ちゃんだ、だってこの様子で密通《まおとこ》も何もあったもんじゃあないやね。何だかちっとも分らないが、さて、内の御新造様と、お前様とはどうしたというのだね。」
 知らず、これをもまた何とかいわむ。
「摩耶さんは、何とおいいだったえ。」
「御新造さんは、なかよしの朋達《ともだち》だって。」
 かくてこそ。
「まったくそうなんだ。」
 渠《かれ》は肯《がえん》する色あらざりき。
「だってさ、何だってまた、たかがなかの可いお朋達ぐらいで、お前様、五年ぶりで逢ったって、六年ぶりで逢ったって、顔を見ると気が遠くなって、気絶するなんて、人があり
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